正しい字体・字形って

近畿地方もいよいよ梅雨入りして、これからしばらくはうっとおしい空が続きますね。

子どもを教えておられる先生方は、すでに「水明書展青少年部」に向けて、大きな紙のお稽古をされていることと思います。

 

正しい字体・字形について

水明展に限らず、子どものためにお手本を書くとき、気になるのが「正しい」字体や字形です。例えば、「年」の4画目は3画目とくっけてまっすぐ書くのが正しくて離れたり、斜めになっているのは間違いか。また最終画は止めるのか、はらうのか。

新米書道塾講師の私は、いちいち教育用の書写事典や漢字辞典で調べますが、辞書ですらまちまちで、ましてや楷書の古典などとは全く違う字形もあります。学習塾などで漢字を先に習っている子どもから、「先生、ここははらうのでいいの?」などと尋ねられて、大慌てで調べ直すなど毎回冷や汗です。

 

教科書体というフォント

さて、現在、学校での漢字指導や書写教育では、もとになっているのは「教科書体」という書体です。学習指導要領、その中でも漢字の学年別配当表で提示されている字体が教科書体です。

 

教科書体の歴史は古く、「昭和10年発行の文部省国定教科書『小學國語讀本 巻五』にはじめて使用された筆書体活字の書体のことで、その文字形象は「毛筆の余分なさばきを抑え、字体を分かりやすくしたかい(楷)書系の書体」と定義されて」います(『教科書体変遷史』より)。もともと、手書き文字に近い書体ということで教科書体が生まれたのです。しかし現在はこの教科書体という名前をつけた市販フォントはたくさんあって、教科書出版社や学参の出版社によって使っているフォントが違ったりします。つまり教科書ですら字形や字体が様々なのです。

 ある調査によれば、そもそも学校の先生ですら書体(フォント)による字形の違い、例えば「教科書体」と「明朝体」の違いを意識されていることは少ないようです。そして、もとは毛筆書体から生まれた「教科書体」ではありますが、今度はそのフォントである「教科書体」をもとにして書写(手書き文字)の教育を行っているということ自体も、あまり意識されていません。そして、この教科書体が正しい字形とされて、これまでの漢字教育では教科書体に合わないものはすべて誤りという極端な例もありました。しかし歴史を見たら、楷書系の書体というだけで、教科書体がすべて正しいとは言えないことはわかります。

 

たとえば、「寺」という字、「土」に「寸」ですが、書体によっては「士」に「寸」、つまり3画目と4画目が同じか、3画目が短い書体もあります。これは市販の教科書体でもどちらもあります。

 

■いったい何が正しいの、何をもとに書けばいいの?

ますます混乱してきましたね。

そんな書写教育の現場での混乱や疑問に対する指針が平成28年に文化庁より出されました。『常用漢字表の字体・字形に関する指針:文化審議会国語分科会報告』です。

この報告書はインターネットでもダウンロードできますし、水明会館には本の形になったものも置いてあります。

*ダウンロードは下記より

『常用漢字表の字体・字形に関する指針』

 

さて「寺」ですが。

指針によりますとどちらの「寺」も間違いではありません。吉田さんの「吉」と「𠮷」がどちらも存在するのと同じです。

 確かに教科書体は美しい書体です。しかし毛筆指導で活字のフォントを基にすることには、危険もあります。ましてや、教科書体だけが正しく、違うものをすべて間違いとすることは避けなければなりません。先の文化庁の『指針』にも「漢字の正誤の判断においては、推奨される一定の字形だけを正しいものとするのではなく、その漢字の骨組みがあるかないかに着目した柔軟な評価が望まれます」とありますし、実際、絶対これだけが正しいと言えるものではありません。特に学校教育と違う、われわれ私塾での指導では、私自身はその点は寛容でおおらかであってもいいのではないかと思います。

 

水明書道会の取り組み

水明誌の子どもの部の手本や支部支援対策の一環として、この春、水明書道会では子ども達の使っている書写の教科書を全種類購入して検討しています。水明会館には、先の『指針』だけでなく、書写の全教科書がそろっていますので、現行の教科書にご興味のある方、参考にしたい方は、一度、水明書道会館で閲覧して下さい。

堀 翠恵

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