• 「煒水の漢詩歳時記」 9月

    2018年9月7日

     古代の中国の人たちは、奇数を「陽」そして偶数を「陰」と考えていました。そして、奇数の重なる月日は陽の気が強すぎるため不吉とされ、それを払う行事として節句が行なわれていました。特に、九月九日は最も「陽」が強く、負担の大きい節句と考えられていました。しかし、後に、陽の重なりを吉祥とする考えが広がり、今では、最も重要な祝い事の日として「重陽(ちょうよう)の節句」が定着しました。重陽は、高い所に登り、遠くを望んで郷愁や望郷の思いを慰める日となりました。また、重陽の日は、健康長寿のため菊酒を飲み、身に茱萸(しゅゆ:カワハジカミ)を帯びて災厄を祓います。   

     

    蜀中九日登玄武山旅眺                     

                             王渤(初唐)

     

    九月九日望鄕臺   

    他席他鄕送客杯   

    人情已厭南中苦   

    鴻雁那從北地來   

     

     蜀中九日(しょくちゅうきゅうじつ)玄武山に登り 旅眺す

     九月九日 望郷の台

     他席 他郷 客を送るの杯

     人情 已に厭う 南中の苦

     鴻雁 那ぞ 北地より来たる       

     

      (意味)

       九月九日、陽用の節句に故郷を望む台に登る。   

       他の宴席では、杯を交わし異郷に旅立つ人を送っている。               

       人々の気持ちは、すでにここ蜀中の暑さには辟易としているのに、           

       雁はどうして北の地からわざわざこの地に飛来するのであろうか。           

     

    【語彙】        

    旅眺:旅先での眺め   九月九日:陰暦の重陽の節句

    望郷台:成都の北にあった台   他席:ほかの宴席

    他郷:生まれ故郷でない土地   客:旅人

    南中苦:蜀(いまの四川省)の地の暑さ           

    鴻雁:秋に中国に飛来する渡り鳥。大きなものを鴻といい、小さなものを雁という       

    那:どうして、「何」と同じ       

     

    【作者紹介】

     王渤(おうぼつ):650年(永徽元年)〜676年(上元3年)           

    唐代初期の詩人。字は子安。隋末の儒学者王通の孫。幼くして神童の誉れ高く、六歳で文章を作り、十四歳で科挙に及第した。しかし、左遷が多く、官途には恵まれなかった。               

     二十歳から二十二歳まで蜀中を遊歴した。この詩はこの時のものである。

     楊炯(ようけい)、盧照隣(ろしょうりん)、駱賓王(らくひんおう)とともに「初唐の四傑」と呼ばれた。       

     

                 

     秋の訪れを告げる雁は、初夏の燕同様に、季節の移り変わりを人々に知らせる「候鳥(こうちょう)」である。   

     通常は雁の飛来は秋の到来であり、喜ばしいことではあるが、この詩は「なぜ、この住みにくい蜀へ来るのか」と反問しているところが面白い。これは、雁の来る北方の都に帰りたいという作者の願望なのだろう。       

     十日菊、六日菖蒲という熟語がある。重陽の節句の菊や端午の節句の菖蒲は値打ちがあるが、節句の翌日の菊や菖蒲は時期遅れであるという意味である。今でいうなら、二十五日のクリスマスケーキといったところか。

     

    佐藤煒水

    水明書展 青少年部 講評より

    2018年8月14日

     水明書展 第67回青少年展は、多くの作品が並び沢山の方が見に来られて大盛況でした。

    最終日に行われる表彰式が、台風のため8月12日に京都文化博物館5階の小部屋でおこなわれました。。

     そのとき、講評でとっても良いお話をされたので、ご紹介します。

     今年の出品数は620点。それぞれが素晴らしく、全ての作品に努力賞を差し上げたいと思います。

     と言いますのは、あの1枚を出品するために、たった1枚しか書いていないという人はいないでしょう。

    それぞれが先生の指導を受けながら、練習を重ねたに違いないと思います。

     だからその努力に、まず努力賞を差し上げます。

     

     皆さんに質問です。

    何枚ぐらい書きましたか?

    10枚ぐらいの人?

    20枚は書いたよという人? 30枚? 50枚以上の人?

    さすが、ここにおられる皆さんは数えきれないくらい沢山書かれたのでしょうね。

     

    さて、ここで私が申し上げたいのは、

     書くときに考えてほしいのです。

     

    私が教えている子供たちの中には、「3枚書いて」というと、ただ何も考えず「書いた!」と

    持って来る子がいます。

    1枚書いたら、どこがおかしいか考える。次はここを気を付けよう! この線はもっと長く書いてみよう!

    などと意識して考えて書くことが大切です。

     ただ何も考えず書いても良い作品は出来上がりません。

     このことは、勉強やスポーツにも言えることです。

     

     皆さんの今回の作品は最高だったと思っておられるでしょう。

    でも、最高はさらに上へと塗り替えられます。

     

     みなさん! 来年も、みなさんの素晴らしい作品を期待しています。

     簡単ではございますが、講評とさせていただきます。

     

     

    表彰式に参加できなかったみなさんにも、ぜひこの講評のことばを頭に置いて

    おけいこにはげんで頂きたいと思いました。

     

    (小塩美映)

     

     

    漢字ゲームこぼれ話 その2

    2018年8月8日

    大好評! 漢字ゲーム

     

     

    第67回水明展青少年部で行われた漢字ゲーム、評判はおおむね好評でした。

    こんな楽しいゲーム、皆さんも作ってみませんか?

     

    自分で作るときは、少し厚めの紙(画用紙など)を「名刺」か「カルタ」

    くらいの大きさに切ります。

     

    そのカードに、学校で今までに習った漢字を分解して書いて行きます。

    へんとつくり、かんむりとあし、などたくさん書いてくださいね。

     

    ただ組み合わせるだけでは、簡単すぎてつまんないや、というかたは

    違った組み合わせ方もやってみてください。

     

     たとえば、2枚ではなく3枚以上のカードを組み合わせて一つの漢字を

    作ってみるというのは、いかがですか?

     「立」と「日」と「心」を上から下にならべると『意』、「心」の代わり

    に「十」を使うと『章』ができます。

     『盟』、『萌』、『墨』、『盆』、『働』なども3枚のカードで

    できそうです。

     

     ここでちょっと話は変わりますが、「林」を分解してカードを作っていた

    時に気づいたのですが、「林」はへんもつくりも「木」ですが、同じ「木」

    でもへんとつくりではかなり様子がちがいます。へんの方の「木」は真ん中

    から右側がとても短く、最後の右はらいは、点のようです。

     へんの右側にはつくりがくるので、ぶつからないよう、へんが遠慮して

    右側を小さくしたのでしょう。

     同じように「火」「金」なども「ひへん」や「かねへん」になると、右側が

    とてもみじかくなります。

     

     漢字ゲームのカードを作って遊ぶと、ほかにも漢字についていろいろ気づく

    ことがあるかも知れません。

     漢字はとても奥深くておもしろいものです。漢字に興味がもてれば、漢字を

    おぼえたり、漢字を筆で書いたりすることがきっと楽しくなるでしょう。

    (小塩美映)

    「煒水の漢詩歳時記」 8月

    2018年8月1日

    梅雨末期の豪雨が西日本を襲い、広範囲に甚大な被害を与えました。まさに、歴史的な惨状です。

    また、梅雨が明けると一変して、今までに経験したことがない猛暑で、京都市内は連日38度の体温を超える暑さが続いています。

    このような異常気象や猛烈な暑さがこれから続くと思うと恐怖すら感じます。

    漢詩の世界でも、夏の暑さを恐れる詩は多くあります。また、暑さを表現する言葉は、冬の厳しい寒さを訴える言葉の比ではありません。思いつくままに書いても「暑威」「炎蒸」「隆暑」「列暑」「辱暑」「溽暑」など多くありますが、極めつけはここに紹介する漢詩の詩題、「毒暑」でしょう。

     

     

     毒暑       趙翼(清)

    毒暑今年甚  

    当空煽赤鳥  

    人将投灸甕  

    天果作洪炉  

    毛竅珠抛汗  

    疿根粟突膚  

    何当縮地法  

    遁入水晶壷  

     

      毒暑 今年甚(はなはだ)し

      空に当たり 赤鳥を煽(あお)る

      人 将に灸甕(しゃよう)を投ぜんとし

      天 果して洪炉を作(な)す

      毛竅(もうきょう)珠のごとく汗を抛(なげう)ち

      疿根(ひこん)粟のごとく膚(はだ)を突く

      何当(いつ)か 縮地の法をもて

      遁(のが)れて 水晶の壷に入(い)らん

     

    【意味】

    今年の暑さはことのほか厳しく

    太陽が空にあって、盛んに燃えている

    人々はかまどに投げ入れられたよう

    この世は、果たして溶鉱炉のよう

    毛穴からは汗が吹き出し

    あせもが粟のように肌にできる

    いつの日か、距離を縮める術を使って

    竜宮城に逃れたい

     

    【語彙】

    赤鳥:太陽  灸甕:かまど  洪炉:溶鉱炉  毛竅:毛穴

    疿根:あせも  何当:何時  

    縮地法:昔、費長房という仙人が使った道術の一つ、ドラえもんの「どこでもドア」のようなものでしょうか。

    水晶壷:竜宮城

     

    【作者紹介】

    趙翼:(ちょうよく、1727年〜1812年)

     清朝の代表的な考証学者の一人で、江蘇省武進県の出身。号は甌北(おうほく)。商人の家に生まれたが、乾隆帝に認められ軍機処の章京を務めた。1761年の進士。

     

     

     厳しい暑さは、まさに心身を害する毒です。このところ連日ニュースなどで聞かれる「命に関わる暑さです」という言葉にもうなずけます。

    首聯(しゅれん:1・2句)、頷聯(がんれん:3・4句)、頸聯(けいれん:5・6句)は暑い日を詠った代表的な表現です。夏の暑さをここまで表現した漢詩はそう多くありません。

     また、尾聯(びれん:7・8句)はなかなかしゃれており、また、ユーモアがあって面白い表現ですね。

     現在では、エアコンの効いた部屋に逃げ込めますが、当時は大官といえども、暑さからは逃げられなかったのでしょう。

     

    (佐藤煒水)

    子どもも大人も夢中になった漢字ゲーム〜第67回青少年部展番外編・こぼればなし〜

    2018年7月31日

    なんで漢字ゲームなん?

     作品を見に来る子どもたちに、「楽しくて、ちょっとタメになる、なんかいいイベントはないかな」と考え、理事会で考えたのが「漢字ゲーム あわせて何ができる?」でした。

     漢字を構成する「へん」「つくり」、「かんむり」「あし」を組み合わせて漢字をつくろう!漢字は難しすぎても、簡単すぎてもダメ。そこで出品者数が多い4年生で習う漢字から「へん・つくり」で構成する漢字24字、「かんむり・あし」が24字の計48字を選択。

     

    どんなして作らはったん?

     書展らしく、パソコンの文字ではなく、毛筆で手書きがいい。いざ、「へん」「つくり」「かんむり」「あし」を別々に墨と朱墨で書いてみると、これがなかなか難しい。書き上げた漢字を2セット用意するためコピーして、一枚一枚パネルに手貼り。これもまた、しわになったり、破れたりの失敗続き。縁は子供たちがケガをしないようにカット。あまりの手作り感に会場では「こんなめんどくさいこと誰がしはったん?」という声が。じつは作成は理事長・副理事長の初老チーム。老眼鏡をかけたりはずしたりしながら、計96枚を仕上げたのは、展覧会の前日というバタバタ。

     

    「はんこ3個」の景品「おもしろ消しゴム」

    「3問正解」でもらえる景品のかわいい消しゴムを格安で探してきてくれたのは会計さん。当初用意した200個はなくなり、あわてて100個補充したのはうれしい悲鳴でした。

     子どもたちに加え、一緒に来られた保護者の方々も必死で取り組んでいただいている風景を見て、本当にうれしく思いました。

     

    サポートの先生の苦労

    「これどうやるの?」「わからへん・・・」という子どもたちに1枚ずつカードをめくりながら、「これかな」と考えさせ、「はんこ3個」に導いてくださった先生方、ご指導ご協力ありがとうございました。

    なんと!

    「いいとこ見っけ島」に「漢字ゲームが楽しかった」という感想を残してくれた子どもたちもいましたよ。「はんこ3個」にちょっと自慢気な表情を見て、うれしく思いました。

     

    「地蔵盆のイベントに使いたい」「地域の老人会の余興に貸して!」というオーダーもいただき、初老チームはちょっと喜んでおります。

    来年も、来場の子どもたち、みなさまに「水明書道会って、楽しみながら、学べる」「なんかおもしろい」と感じていただけるようにがんばります。楽しみにしていてくださいね。

    (事業部・石飛 篝)

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