煒水の漢詩歳時記 1月      

 

あけましておめでとうございます。

 

 

1月は新春を祝う月です。そのため1月には節句が多くあります。

1日は「元旦」(1月1日は年の初め、月の初め、日の初めですので三元、あるいは三始などともいいます。)

元旦には、青竹を火にくべて、その弾ける音で邪気を払いました。宋代になると竹の中に火薬を入れるようになり、現在では爆竹を使います。これは、音が大きければ大きいほど邪気が払えると考えられていたためです。     

そして、お屠蘇(とそ)を飲みます。屠蘇は延命長寿を祈って「屠蘇散」を酒に混ぜたものです。屠蘇散とは、「山椒」やニッケイの樹皮を乾燥させた「桂皮」、セリの根である「防風」、そして「桔梗」などの漢方を粉末にしたものです。

門扉上には桃の絵の「桃符」がかけ替えられます。桃は邪を避けるといわれています。

7日は「人日」です。人日には日本では七草がゆを食べますが、中国では7種の菜のスープを飲みます。                                                         

15日は日本でも小正月でおなじみの「上元」です。また、日本ではあまりなじみがありませんが、1月31日は「晦日」といいます。  

 

爆竹で新年を祝う人

 

 


さて今回は日本人、武田信玄の漢詩です。「新正口号」で、元旦に詠まれたものです。                                                              

 

新正口號    武田信玄                                                       

 

淑氣未融春尚遅

霜辛雪苦豈言詩                                         

此情愧被東風笑                                                 

吟斷江南梅一枝

 

 淑気(しゅくき)未だ融(と)けず 春 尚遅し

 霜辛雪苦 豈(あ)に詩を言はんや                               

 此情 愧(は)づらくは 東風に笑はれんことを

 吟断(ぎんだん)す 江南の梅一枝

 

【意味】                               

新春元旦に口ずさんでできた詩

おごそかな雰囲気はまだゆるまず、春が来るのがまだ遅れている。 

霜の辛さや雪に苦しめられているなかで、どうして詩を作る気になどなるだろうか。

しかしこんな気持ちでいると春風に笑われてしまい、まことに恥ずかしいかぎりだ。

ここは気持ちをあらたに、六朝の陸凱(りくがい)が「江南の梅を一枝贈ろう」と詠じたのにならって一枝の梅を詠むこととしよう 。                                                        

 

【語彙】                                                       

新正:新年の元旦

口號:口ずさむ。また、気軽に口ずさんでできた詩。

淑気:穏やかな春の気配

東風:春風

笑 :咲く

吟断:「断」は動詞のあとについて意味を強調する。

江南梅一枝:陸凱《贈范曄》「折梅逢駅使 寄与隴頭人 江南無有所 聊贈一枝春」を踏まえたもの。

【解説】

この漢詩の作者の武田信玄(1521〜1573年)は、甲斐(かい:山梨県)の守護を務めた甲斐源氏武田家第18代・武田信虎の嫡男で名は晴信、のち出家して信玄と称しました。戦国時代を代表する甲斐の大名で、政治軍事にすぐれた手腕を発揮し、民政、領土拡大に力を注ぎました。甲斐本国に加え信濃、駿河、西上野、遠江、三河と美濃の一部を領し、次代の勝頼期にかけて領国を拡大したものの、都への進軍の途上に三河で病に倒れ信濃への帰還中に病没しました。

この漢詩は唐、宋の漢詩に比べると、確かに見劣りします。しかし起承転結や平仄(ひょうそく)、押韻(おういん)など漢詩の基本にかなった秀作です。漢詩を作れる武士自体がまだまだ少なかった時代に、信玄が典故を踏まえた詩を作れたということに驚きを感じます。

高野山成慶院蔵の長谷川等伯筆の「伝武田信玄像」。どっかりといかにも豪快な戦国武将らしい画像で、かつては教科書にも載せられた有名な画像ですが、近年これを信玄画像とするのに異論が出て、伝武田信玄像となっています。

 

(佐藤煒水)

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